転職した結果を振り返ります。
転職の定義だが、実際には転社の要素が強い。今までITのユーザー企業でITシステムの管理者やITプロジェクトの推進者だった。今度は、ITベンダー側で働く事になった。IT系からパン屋になるといった転職ではない。
最初は大変だった。新しい職場では、新しい前提に慣れる必要がある。一番大きかったのは、仕事を行う上で、知っているべき情報や前提を知らないという点だった。偶然、今の仕事もある外資系企業の日本支社でシステム管理者としての仕事だ。ある意味、前職と同じだ。しかし、実際に仕事をする上では、使うツールの使い方・システム毎の役割・会議や意思疎通の方法等、どんな会社で働こうとも会社毎に知っておかなければいけない事が沢山ある。これは新しい職場にいけば、必ず遭遇する事だ。自分は全体・前提・これまで背景等、知らないが、それは仕事の依頼者にとっては全く関係ない。その人にとって、自分がその職場でどういう前提までしっかり知っているかは知りようがないし、知る必要もない。その人にとっては、いつも通り、私に仕事の依頼をしたり、相談するだけである。相手にとっては簡単だと思う仕事も私にとっては、業務前提・システム前提・仕事のやり方の前提等、きちんと把握しないと判断が出来ないので、処理には時間がかかった。
一方で、嬉しい誤算もあった。仕事の処理速度はなかなか上がらないが、大きな視点では、依頼されている仕事がどういう仕事なのかは、すぐに分かった。これは17年間、システム管理者としての色々なプロジェクトの導入と運用をやってきたからだろう。
大変ながらも、分かってきたもあった。以前から思っていた事だが、以下の事は、中小企業でも大企業でも、また外資系でも日本企業でも変わらないと確信しました。
1.IT活用を進めると、複数のシステムが出来上がる。それらを互いに連携させるが、運用していると必ず、連携では不具合が起きる。
2.IT化を進める上で、依頼側が希望したシステム機能が、実装されない事がある。
1番目は必ず起きる。データを連携するという事は、それを繋ぐ何かが必要になる。リレーのバトンのようなものです。例えばバトンを渡そうとしたら、相手がいない場合もあります。また、まだバトンを貰っていないのに、走りだしたりする人もいます。実際のリレーなら考えられないが、システム間のリレーではこんな事が起きます。具体的には、連携の為のバッチ処理やリアルタイム処理が走るが、受け取るべきデータが来ていない、または意図しない形でデータがやってくる場合がそれに相当します。Aというデータで来ると聞いていたのに、データが来ないで処理が実行される。またAと聞いていたのに、Bという形で来る。IT活用を進めれば進める程、沢山のシステムが出来がちだ。そして、それを連携しようとするので、連携の数も多くなる。そして、連携では必ずバトン渡しでミスが出るので、それを手当する人間が必要になる。IT活用と進める為に沢山システムを作るとその分、連携のトラブルが多くなるのは残念で皮肉な事だ。
2番目の問題もよく目にする。依頼者は業務目的をシステム担当者に伝えようとせずに、出来るだけ、システムをどう変えてほしいという事だけを端的に伝えようとする。その方が相手にとって、端的で分かりやすいだろうと暗黙的に思ってしまう。システムの作り手側は、目的を伝えられず、手法だけを伝えられる。このようにして、手法だけを依頼者と作り手側が共有して、システム開発が行われる。しかし、実施に依頼者側は、出来上がったものを見ると、やりたい事が実現できていないと不満を漏らす。なぜか?業務目的を達成するための手段が漏れなく実施されていないからである。目的不在で物事を進めると、その実現手法で抜けがある事に気づく事が出来ないからである。具体的にはこんな事例があった。ある項目を追加したいという内容だった。実際に項目は追加された。しかし依頼者の目的は達成されていなかった。依頼者はその項目を使って、レポートで内容を確認したり、分析ツールで分析を行いたかったのだ。実際にその件の対応履歴を追跡してみた。残念な事に業務目的は、依頼者側と作り手側で共有されていなかった。作り手側内の対応記録を見ると、ただ、項目を追加する、そしてその項目にどういうタイミングでどうなデータが保存されるのか、という点だけが強調されて作業を行われていた。依頼者側も項目追加作業がまさか本当に追加だけで、実際にレポートや分析で使えないとは露ほども思っていなかっただろう。しかし、現実にこういう事が起きていたのである。
組織は人間によって構成され、人間によって運営されている。日本人とか外国人とか全く関係ない。ホモサピエンスが集まって何かをすれば、大体同じ結果になる。それが日本で行われていようが、アメリカだろうが、韓国だとうが、関係ない。人間が集団で作業して、うまくいかないパターンや失敗しそうな事は、世界の何処であっても同じだ。人種や国籍は関係ない。
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