人民統治のあり方(1984より)

政治

ジョージ・オーウェルの1984(英語版)を読んでいます。

1984 (Original English Edition)【電子書籍】[ George Orwell ]
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この本で登場する国の統治システムが興味深いです。

世界は大きく三つに分かれて統治されています。オセアニア・ユーラシア・イースタシアの三つです。この三つの国が小競り合いの為の戦争は行っているが、世界のこの国によって安定的に統治されています。

主人公のウィンストンはユーラシアにいます。ユーラシアでは国民は常にテレスクリーンというモニターで監視されています。また、国の意向にそって過去の全て書き換えられます。これによりユーラシアを統治している政府は常に正しい世界を構築しています。

ウィンストンは国の統治システムについて書かれている禁断の本を読んでしまいます。戦争は平和の為の手段として使われていました。経済の為に生産が必要です。生産する為には、需要が必要です。その為、各国の境界線上で適度な戦争を行い、物を破壊します。これにより需要が発生して、生産が行われます。戦争はお互いを攻撃する為の戦争ではなく、一部の訓練された軍人が行う、両国が合意済みの経済持続行為の手段に過ぎなかったのです。これを定期的に行う事で生産活動が安定的に行われ、経済も安定します。

また、国民は他国の状況は分かりません。政府から発表される内容をあらゆるメディアで知るのみです。他国の状況が分からないので、自分達の状況が良いのか悪いのか比較する事すら出来ません。これによって自分達がひどい目にあっており、政府に反乱しようという考えすら持たなくなります。

この場合、政府にとって最も都合の悪い国民は教育された頭のいい国民です。政府はテレスクリーンというモニターをあらゆるところに配置して、少しでも都合の悪い言動を行っている国民がいたら、彼らを消します。要は殺すのですが、事実として彼らはこの世に存在していなかった状態になります。

国の思想を永続的に国民に普及させるため、政府はBig Brotherという存在を作ります。Big Brotherは誰も見た事がありません。存在しないのですが、教祖的な存在としてBigBrotherを作り、彼から国の思想が国民に伝えられます。実際に国を取り仕切る人間の寿命より、国家の寿命の方を永らえさせるには、このように人間ではなく人々の思想の中に永久に息づく象徴人物を作り上げ、彼を通じて政府の思想を国民に普及させるのです。これにより、政府は人間という命に限りがある存在に依存せずに、永久に国民の思想の中に生き続ける象徴を通じて一貫した思想を国民に植え付ける事が可能になります。

政府は思想教育の為に、言葉の統制も行います。使う言葉の種類を極端少なくします。goodの反対語としてbadは不要となり、代わりにungoodという単語を使います。この考え方なら、反対語は全て不要になり、語頭に反対を意味するunをつければ全ての反対語をなくす事ができます。また、goodを強調する場合、doublegoodとします。これにより、goodを強調する「素晴らしい」という意味の様々な単語は全て無くなります。言葉が思想を作るので、この言葉の数と意味を大きく制限する事で、国民に余計な事を考えさせなくするのです。

政府が一番恐れている対象は、中流階層です。ユーラシアは三つの社会階層に分かれています。Highと呼ばれる層は、政府を動かしている少数の層です。Middleは多くの国民です。Lowは貧困層です。経済活動を行うと、必ず貧富の差は生まれます。うまくお金儲け出来るものとそうでないものは必ず生まれます。Middle層の一部に、教育され、頭のいい奴ら出てきたら、政府にとっての脅威になります。一旦、Highに属する事になったら、その人々は今の地位を常に安定させたいと目論みます。

Highの人達にとっての平和、それがこの1984の世界となります。世界は三つの国で寡占状態となり、戦争は経済の為のお約束行為になり、それを取り締まる機関もありません。相手を征服する為の戦争ではなく、約束された戦争を通じて、各国は常に安定な平和を享受できます。各国の国内は宗教のような象徴を作り、国民思想を統一していきます。また、国民に政府にとって危険な思想をさせない為に、国民の思想の根本である言葉にも制限が課されます。

更に国民の言動は常に政府に監視されており、政府に都合の悪い言動を行っている、または行いそうな人物は、この世に存在しなかった事として消されます。政府が発表するあらゆる事実は、何度も何度も政府の都合の良い状態に書き換えらえます。歴史は誰にも分からなくなっていきます。

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